会長あいさつ

Mizushima_N

2015年11月に日本生化学会会長を拝命いたしました。微力ではありますが本会および日本の生命科学の発展に貢献できるよう努めて参りたいと存じますので、何卒、ご支援ご指導のほどよろしくお願い申し上げます。

 

日本生化学会は1925年に設立された日本でもっとも伝統ある学会のひとつです。1965年に社団法人、2012年には公益社団法人となりました。まずは日本生化学会のすばらしい特色について、それらを改めて紹介させていただきたいと思います。

 

年会

最大のイベントは毎年恒例の年大会です。シンポジウム、ワークショップなどの口頭発表とポスター発表を基本としています。その上に、会頭の創意によってさまざまな企画が加わります。生化学会はネクタイ着用で堅苦しいといったうわさもあるようですが、そんなことは決してありません。自由闊達なディスカッションで活力に溢れています。また、日本分子生物学会、国際会議であるIUBMB、FAOBMBとの合同年会など、より大きな枠組みでの大会も開催してきています。

 

支部

生化学会には北海道、東北、関東、中部、北陸、近畿、中国四国、九州の8つの支部があります。年1回の支部例会開催などを通じて、地域コミュニティーの形成、特に若い研究者の相互交流など、本部や大きな年会にはない役割を担っています。代議員の選出も支部毎に行われ、支部長は学会理事を兼務します。

 

顕彰制度

4つの主要な顕彰制度があります。生化学会の賞としては、40歳未満の研究者を対象とした「奨励賞」(副賞30万円)、英文誌「Journal of Biochemistry」に掲載された優れた論文に授与される「JB論文賞」(副賞10万円)があります。これに加えて公益財団法人倶進会の依頼により、「柿内三郎記念賞」(副賞100万円)と「柿内三郎奨励研究賞」(助成金50万円)の選考を行っています。「柿内三郎記念賞」は2013年より年齢制限が撤廃されていますので、より多くのご応募を期待しております。(「奨励賞」の応募には年会での発表歴などの若干の要件がありますので、積極的にどんどん発表しましょう!)

 

学会誌刊行

生化学会では2つの学会誌を発行しています。和文誌「生化学」は総説、みにれびゅー、特集を中心に掲載しています。とりわけ、日本語の総説誌が減ってきている状況にあって、初学者や分野外研究者には貴重な存在となっています。2014年からは大変読みやすいオンライン版(無料)も閲覧できるようになっています。一方の英文誌「Journal of Biochemistry」は原著論文を中心に掲載しています。日本人エディターと直接やりとりしながら論文審査を進めることができますので、積極的にご活用ください。「JB論文賞」の対象にもなります。

 

その他、JBSバイオフロンティアシンポジウムとしての国際会議の援助、FAOBMBの日本窓口、研究会の共催・協賛・後援、他機関・財団の賞・助成の学会推薦など、本会には優れた点が数多くあります。2015年は男女共同参画学協会連絡会の幹事学会も務めます。詳しくは、また別の機会にご紹介させていただきたいと思います。

 

一方で、生化学会が直面している課題もあります。会員数は少しずつですが減少傾向にあり、大会への参加者数も減ってきています。これについて、「大きな学会は‘お祭り’なので遠慮したい」という声を若い研究者から聞くことがあります。私は‘お祭り’であることに大賛成で、是非若い研究者にこそ‘お祭り’に参加してほしいと願っています。自分自身の研究テーマに関連深い小さな研究会の方が魅力的で今は有用であるでしょうが、長い研究人生を歩んでいくには鳥瞰的視点に立って大局的な思考ができることも重要です。研究テーマが細分化してきている昨今だからこそ、生化学会で普段とは違う分野、技術、考え方に接して、より大きな視点で生命科学を眺めていただきたいと思うのです。

 

ご存知のように、日本には非常に多くの生命科学系の学協会が存在しています。そのなかで日本生化学会だけが発展すれば良いということは決してありません。日本の生命科学全体の枠組みのなかで他の学協会と連携しながら日本生化学会がどう貢献すべきかを考えることが重要です。国際社会において、研究者ひとりひとりが誇りと自信を持って元気よく研究できるよう、そのための機会と仕組みを提供し、さらに研究者と社会との橋渡しを担うことが本会に課せられた役割であると思います。今後2年間微力ながら尽力いたす所存ですので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 

                                       2015年11月
                                       日本生化学会会長
                                       水島昇