6月15日付で第93回生化学会大会・会頭の深見先生から大会のWeb開催の概要についてメール配信されました。深見会頭をはじめ組織委員会の先生方が、この新しい大会のあり方について議論され、未来型大会のモデルとなるようにご努力なさっています。リアルの大会において、研究者同士が直接討論することの重要性は私達が認識しているところではありますが、Web上でのリモート開催には、時間と場所による制約を乗り越えるメリットもあります。例えば、期間限定ではありますが、ストリーミング配信された講演内容を自分のペースで何度でも視聴することが可能です。また、大会会場に足を運ばなくても、オンラインでの発表であれば、臨場感をもって大会に参加することもできます。COVD-19の影響でやむおえなくWeb開催となりましたが、これを新たな試みに挑戦する機会ととらえて、是非大会にご参加いただきたいと思います。Late-breaking Abstractsの募集も始まっていますし、当日参加も受け付けますので、是非多くの会員の皆様方にご参加をお願いいたします。
さて、今回は、4月13日に行われました第158回理事会での決議内容のうち、下記の3項目につきましてご報告したいと思います。
1)代議員・理事の再任(重任)の変更について
2)「早石修記念海外留学助成」支給開始期間延長について
3)第96回(2023年)大会会頭候補者の承認
1)代議員・理事の再任(重任)の変更について
現在の定款・細則では代議員・理事の任期は2期4年まで連続就任が可能です。しかし、選挙により理事が選出されるため継続就任する理事も少ないことから、中長期の計画が立てづらいこと、会長就任者には常務理事・副会長の就任経験が望ましいことから、任期を3期6年まで連続就任できるように定款・細則を変更することとしました。この内容を理解していただくために、生化学会の組織についてご説明いたします。
日本生化学会は2012年の公益法人化にともなって、現在の代議員制となりました。正会員約40名につき1名の割合で代議員が選出され、生化学会の意思決定機関である総会は「代議員」によって構成されます。支部の会員数に応じて代議員数が決めらており、代議員は支部毎の選挙で選ばれます。現在は合計171名の代議員がおられます。次に、代議員の中から理事が選挙で選ばれます。生化学会には、医学・歯学、理学、農学・工学、薬学の4つの部門があり、それぞれの部門から代議員の互選により3~4名の部門理事が選ばれます(現在は14名)。それに加えて、8つの支部の各支部長が支部推薦理事となります。最終的に総会で承認されると理事が決定します。理事は定款上20~25名となっていますが、現在は22名です。このような仕組みによって、部門間の偏りなく理事が選ばれ、支部から理事会への提案・報告がスムーズになります。さらに、理事の互選によって、会長1名、副会長2名、常務理事6名が選出され、実質的な執行部として学会の運営にあたります。なお、理事会と会計の監督をしていただく監事は3名以内で、会長から委嘱します。
このような体制で生化学会は運営されていますが、上述しましたように、代議員と理事の連続任期は2期4年であり、選挙により選出されるために、4年間継続して役職に就かれる方が少ない現状があります(現在の理事で前期から継続している理事は22名中3名です)。さらに、理事の中から会長と副会長、常務理事が選出されますが、選挙という性質上、これまでの理事会での議論に加わったことがない方が会長職に就かれることもあります。生化学会の将来を考えますと、理事会が長期的視野を持って、計画的に、継続的に種々の事案を実行していかなければなりません。継続性という視点で、代議員と理事の任期を3期6年まで連続就任できるようにいたしますので、是非会員の皆様方にはご理解を賜り、生化学会の現状と将来を考えてくださる代議員を選出していただきたいと思います。
代議員と理事の選出における問題として、女性会員の少なさもあります。現在の正会員の男女比は女性22%ですが、代議員と理事の女性比率は10%程度ですので、女性比率を上げるべきであると考えます。ジェンダーの問題はいろいろな分野で議論されていますが、男女を問わずそれぞれのジェンダーを、組織の一定割合にすることは可能であり、その努力をしていかなければなりません。そのために重要なことは代議員選挙です。2021年7月に代議員選挙が行われますが、その際に各支部に女性候補者が20%程度選出されるよう依頼しようと考えています。女性会員の皆様も、積極的に代議員、理事として生化学会の運営に携わっていただけるよう、ご協力ください。
2)「早石修記念海外留学助成」支給開始期間延長について
2020年度「早石修記念海外留学助成」採択者の給付開始が2020年4月1日から1年ですが、COVID-19感染拡大防止のため、多くの留学先機関で閉鎖やビザ発行停止となりました。その救済措置のため、給付開始期間を2020年度に限り1年間の延長を認めることとしました。
また、現在2021年度「早石修記念海外留学助成」の募集を行っていますが、COVID-19により影響を受ける際には、柔軟に対応したいと考えていますので、是非積極的にご応募ください。
3)第96回(2023年)大会会頭候補者の承認
2023年開催予定の第96回大会会頭候補者として、住本英樹教授(九州大学学院医学研究院)を理事会から推薦することになりましたので、11月の総会で承認していただきたいと存じます。2021年大会は深水昭吉教授(筑波大学生存ダイナミクス研究センター)、2022年大会は門松健治教授(名古屋大学医学系研究科)に会頭として、大会を運営していただきます。本年の大会をモデルとして、これからの生化学会大会がどのように変わっていくかが大変楽しみです。
日本では非常事態宣言が解除され、多くの国で経済や交通を活発化させようとする動きが高まっています。一方で、COVD-19に対する心理的不安感は払しょくされないために、以前とは同じ生活にはなっていません。大学も研究活動は戻りつつありますが、学部学生に対する講義はリモートで行っているところが多いかと思います。「New Normal」へ私達が適応していくことが求められています。
繰り返しになりますが、9月にWeb開催される生化学会大会への積極的なご参加をお願いいたします。会員の皆様のご健康ならびに研究と教育におけるご活躍を祈念しています。
2020年6月19日
会長 菊池 章