若手研究者に聞く-奨励賞受賞者からのコメント-
推し研究者を見つけよう!京都産業大学生命科学部
潮田 亮
この度は、「レドックス制御に基づく小胞体恒常性維持機構の解明」というテーマで、名誉ある日本生化学会奨励賞を受賞させて頂きました。今回、受賞者から、若手研究者、特に大学院生に向けてということで、まだまだアドバイスを頂く必要のある私が僭越ながら私見を書かせて頂きます。
私は京都大学再生医科学研究所永田和宏教授の研究室に修士課程から参加し、修士1年の時にカナダの留学先でタンパク質品質管理に関わる新規因子を発見しました。今回の受賞テーマも、この因子の発見がきっかけで、その追求を未だに続けていることになります。私が研究を継続できたのは、もちろん、この因子が関わる生命現象が面白かった訳ですが、私の師匠である永田先生は研究者になるための資質の1つとして、「自分の研究がオモロイのは、当たり前。他人のデータを、自分のデータと同じくらい面白がれるかが大事」と、よく仰っていました。この言葉に、学生時代の私はひどく悩みました。だって、自分の研究が1番面白いから。皆さんも、自分が出したデータを見る時が、1番ワクワクして面白くないですか?学会などで他人の発表を聞く度に、自分の研究ほどには興味が湧かず、自分は研究者として向いていないと思い、深く落ち込みました。自問自答の日々を過ごす中で、他人の研究をどう面白がれるか、その訓練として、良い方法を1つ見つけました。それは「推し研究者」を作って、勝手にその研究者のファンになることです。講演を聞くだけでも良いのですが、出来れば勇気を出して積極的に色々な先生と話すと、研究内容を詳しく知らなくても好きな先生は意外とすぐに見つかります。私も、初めて行ったイギリスの国際学会でバーに誘って頂き、やけにウィスキーに詳しい先生と出会いました。「ふーん、オートファジーって現象、研究してるんや。なんか、面白そうやなー、帰って調べてみよ」。大隅良典先生でした・・・。知っている先生が増えると、研究の背景とか人間関係とか色々わかってきて、他人の研究もより身近に、よりエキサイティングに感じるようになりました。研究は人間が行うものだから、研究室を出て、実際に研究している人間を知る事も、サイエンスが好きになるには大事だったのです。研究室にずっと籠っていたら、わからないことかもしれません。自分の研究が、他人にとっても本当に面白いのか。結局、永田先生が仰っていたように自分の研究だけを面白がっていたら、研究は続かなかったのかもしれません。他人と面白さを共有して、より深いディスカッションが出来るようになり、その中で自分の研究の位置づけが出来ることが、学生から研究者のステップに大切だと思います。訓練のため、引き続き飲み会などお誘いください。
潮田 亮 氏 略歴
2009年 京都大学大学院・理学研究科・博士課程修了
2009年 京都大学再生医科学研究所・特別研究員
2010年 学術振興会特別研究員PD
2010年 京都産業大学総合生命科学部・プロジェクト助教
2019年 京都産業大学生命科学部・准教授