若手研究者に聞く-奨励賞受賞者からのコメント-

縁を大切に東京薬科大学生命科学部
長島 駿

 この度は、名誉ある日本生化学会奨励賞を受賞できたことを大変嬉しく、光栄に思っております。このような名誉ある賞を頂けたのは、大学の学部生時代から指導していただいた柳茂教授をはじめ多くの先生方のご指導、友人や後輩のご協力のおかげでこのような賞をいただける研究成果に繋がったと思います。

 良い研究テーマ、実験系、研究仲間に出会えることが良い成果をだすことには必要だと感じています。切磋琢磨できる同志がいたからこそ、共に成長でき、今の自分があります。また、研究業績、年齢、立場に関係なく研究の話しで盛り上がれるときは、とても楽しい時間であり、研究を続けていくひとつのモチベーションとなります。特にお酒などを飲みながらリラックスした場で、思わぬ発想が浮かぶ時がありますので、そのような機会を大切にするように心がけています。現在はCOVID-19の関係でそのような時間が持ちづらいのが非常に残念です。COVID-19が収束し、グラス片手に皆で楽しく研究の話しをすることを心待ちにしています。

 私は東京薬科大学の柳茂教授の研究室で研究をスタートさせました。初めの研究テーマは神経変性疾患のひとつであるポリグルタミン病の遺伝子治療を目指した研究であり、変性タンパク質である異常伸長したポリグルタミンの分解を促進する分子の詳細な機能解明に取り組みました。この分子はHeLaなどの培養細胞には発現しておらず、脳などの一部の細胞でのみ発現が認められることから、解析が上手く進まず、とても苦労しました。この時の経験から、目的の成果を得るためには、やる実験だけでなく、やらない実験を決める大切さを学び、現在の研究生活の基盤形成に役立ったと思います。

 次の研究テーマとして始めたのがミトコンドリア外膜に局在するユビキチンリガーゼの解析でした。ミトコンドリア外膜貫通型のユニークなユビキチンリガーゼの解析を通して、ミトコンドリア動態、オルガネラ間コンタクトの研究に取り組みました。柳教授には日頃から「オリジナリティのある研究を目指すように」と指導されておりました。これは簡単なようでとても難しいことですが、研究プロジェクトを進める上で常に心がけています。

 ケンブリッジ大学のJulien Prudent博士の研究室においてもミトコンドリアの研究を取り組み、ライブセルイメージングなどのミトコンドリアの動態解析の技術を習得できたことが現在の強みの一つとなっています。英語でコミュニケーションを取ることが苦手な私に辛抱強く、ディスカッションしてくれたことにとても感謝しており、今の私があるのもこの時の経験がとても大きいと感じています。研究の楽しさをより実感する時間でもあったと思います。

 研究生活を振り返って思うことは、これまでに良い出会いに恵まれたことだと改めて感じています。これからも一つ一つの出会いを大切にするようにしたいと思います。

 

 

長島 駿 氏 略歴
2012年 東京薬科大学大学院 生命科学研究科 博士課程修了
2012年 東京薬科大学 生命科学部 分子生化学研究室 助教
2017年 Medical Research Council, Mitochondrial Biology Unit, University of Cambridge ポスドク研究員
2019年 東京薬科大学 生命科学部 分子生化学研究室 助教
2021年 東京薬科大学 生命科学部 再生医科学研究室 助教