若手研究者に聞く-奨励賞受賞者からのコメント-

できる人の背中を追う奈良女子大学研究院自然科学系
清水 隆之

 最近は、私が学生だった時に比べて、キャリアパスに関する話を聞くことが多くなってきました。かくいう私もこうした話を頼まれる機会が増えましたが、唯一どんな人にも共通して重要だと思って話していることをタイトルにしました。ここで言う「できる人」とは、完璧な人を指すわけではなく、自身の研究(仕事でも良いです)を発展させる上で、取り入れたい考え方を持った人のことを指します。そして、身の回りにいる誰もが「できる人」となり得ます。

 私が首都大学東京で卒研生として研究室に所属した際、隣の席には当時82歳のおじいさんが座っていました。そのおじいさんは時田誠二さんという方で、退官した先生ではありませんでした。時田さんは、満州生まれの銀行マンで、55歳の定年前に退職して共通一次を受けて都立大学に学部1年生から入学し、博士号を取得した方で、私が研究室に所属した時には研究生という立場で研究を続けていました。私は、時田さんの、60歳年下の私にも研究や実験に関する質問をする姿勢から、誰からも学ぶことがあること、そしてそれは恥ずかしいことではないことを教わりました。

 博士後期課程からは、東工大の増田真二准教授(現・教授)のもとに進学しました。増田さんは時田さんと共に博士号を取得した方で、私の修士研究である光合成細菌のレドックス応答に関する研究をしていました。私の研究テーマを決めるにあたって、東工大すずかけ台キャンパスの学食で、増田さんから「Generalに意義のある研究をしなきゃだめだよ」と言われたことが私の研究者としての生き方を決めたと言っても過言ではありません。これ以外にも、研究で大切なことや研究のイロハを教わりました(本人は教えたつもりはなかったかもしれませんが)。実際に、増田さんのもとで行った研究について、Generalityを意識しながら発展させたことが、今回の受賞につながったと感じています。

 私は、ここには書ききれない多くの方々の背中を見て、自分に足りないことや取り入れるべきことを真似しながら、研究者として成長してきました。もちろん、ただのツギハギではなく、それらを取り入れたうえで自分のオリジナリティを確立することが重要です。これからは私も、誰かに背中を追われるような人になることも目指して、より一層精進したいと思います。

 

清水 隆之 氏 略歴
2007年 日本大学第二高等学校 卒業
2011年 首都大学東京 都市教養学部生命科学コース 卒業
2013年 首都大学東京 大学院理工学研究科 博士前期課程(理学)修了
2017年 東京工業大学 大学院生命理工学研究科 博士後期課程(理学)修了
2017年 東京大学 大学院総合文化研究科 助教
2023年 奈良女子大学 研究院自然科学系 准教授