若手研究者に聞く-奨励賞受賞者からのコメント-
幸運に恵まれるためには東京薬科大学生命科学部
中村 由和
この度、日本生化学会奨励賞という大変栄誉ある賞をいただけたのは、良き師に恵まれたことをはじめとして、とにかく幸運であったためであると思っています。そのため、偉そうなことを書ける立場にはありませんので、自分なりになぜ幸運に恵まれることができたのかについて考えてみることにします。今回、受賞対象となった研究はマウス個体レベルにおいてホスホリパーゼCdの生理機能を明らかにするというもので、大学4年生の時に東京大学医科学研究所の竹縄忠臣教授の研究室に配属された時から既に16年以上に渡り続けている研究です。研究を始めた当時、研究室ではマウスを用いた実験はほとんど行われておらず、講師の深見希代子先生(現東京薬科大学教授)をはじめとした数人が手探りで研究を行っている状況でした。そのため、苦労のわりには研究は進まず、こんなことで本当に生理機能解明にまでたどり着けるのだろうかと不安に思っていたのを覚えています。このような状況でしたので、研究では頻繁に壁にぶつかっており、そのたびに先生方、先輩、同僚など周囲に相談し、たくさん議論をさせてもらってきました。頻繁に相談される側はさぞかし迷惑だったこととは思いますが、この過程で問題解決に向けての様々なヒントがもらえることや、新たなアイデアに辿り着くことが多く、行き詰まった状況を打開してくることができました。このようにほぼ他力本願でここまで来たわけですが、私自身、心がけていたことを強いてあげるとすれば、困難な状況でも「何とかして研究を進めたい」、「どうしても知りたい」という熱意を持ち続けることです。この姿勢が周囲の与えてくれる小さなヒントも見逃さずしっかりと受け取るための準備となっていたのだと思います。また、遅々として進まない研究過程においても、日々のごく些細な進展(ネガティブなデータも進展です)を楽しむ気持ちを持ち続けられたことで、地道に研究を継続でき、結果的に幸運に恵まれることができたのかもしれません。今後も、幸運に恵まれ続けることができるように、熱意を持って楽しみながら研究に取り組んでいきたいと思っております。
末筆ながら、これまで御指導くださいました竹縄忠臣先生、深見希代子先生をはじめ、お世話になりました多くの皆様にこの場を借りて深く感謝致します。
中村 由和 氏 略歴 2000年 東京大学薬学部卒業 2002年 東京大学薬学系研究科修士課程修了 2003年 東京薬科大学生命科学部助手 2006年 博士 (薬学) 取得 2007年 カルフォルニア大学サンディエゴ校へ日本学術振興会海外特別研究員として留学 (Dr. Jamora Colin Lab.) 2009年 東京薬科大学生命科学部助教 2010年~ 同 講師