会長便り第4号:「大会会頭に聞く」座談会 ~日本生化学会第95回名古屋大会・門松会頭、第96回福岡大会・住本会頭に聞く~

2023年5月1日

会長便り第4号として、第95回・第96回生化学会大会会頭との座談会をお送りします。
なお、この座談会記録の内容は、各人の発言の意図が会員の皆様に正確に伝わるよう、録音の文字起こしの後に編集を加えた上でお届けするものです。

一條秀憲


「大会会頭に聞く」 座談会

日時:2023年2月24日(金)午前
出席者:会長/一條秀憲、 第95回大会会頭/門松健治、第96回大会会頭/住本英樹

 

【一條会長】 お忙しいところ、本当にありがとうございます。まず、第95回名古屋大会を振り返ってということで、一言いただけますか。

【門松第95回大会会頭(以下、門松会頭)】 コンセプトは、会頭がいくら言ってもそのとおり世の中が動くわけではないので、そこまで重いとは思っていないのですけど。ただ、生化学の歴史を考えると、やはり今後というか、トレンドというべきか、異分野の融合がどうしても必要だと思ったので、手をつないで、そこから汗をかいて、しずくが落ちると広がるというようなイメージでポスターを作りました。
 ただ、やはりよかったなと思うのは、一條先生に本当に感謝ですけども、対面でやろうよと言っていただいたし、僕はずっとそういうつもりでいたものですから、それに乗っかってやって、無事対面でできた。住本さんにも会えましたし、会場で懐かしい顔に会うだけでも、みんな喜んでくれたというのは本当に伝わってきて、それがすごくよかったなということですね。懇親会も会長の肝いりというか、ああいう懇親会は僕も初めてだったし、あれも好評だったと聞いています。やっぱり一條さんのあのアイデアはすごくよかったと僕も思うのですね。そういう意味でタイミング的に運がよかったということもあったし、振り返ってということで言えば、一言それです。本当に感謝しかないです。
 私自身が思ったのは、改めて学会の意義というか、ありがたさも含めてですけど、会員が思ったのではないかと思うのですね。こういう対面であることによって人的な交流というか、この場所として大会というのはすごく大事だ、と。あるいは、生化学会そのものがありがたいというふうに思っていただいた人が多かったのではないかなと思いますね。

【一條会長】 プログラムの特徴に関してはいかがでしたか。特別講演を山本先生と森先生にということで。もう1人はベルトッツィさんでしたが、直前までヤキモキしましたね?

【門松会頭】 彼女はなかなか捕まらなくて、鈴木匡さんにかなり頑張っていただいて、やっと取れたのですけど。もともと忙しい人なんですが、どうもメールがはじかれるみたいだったですね。最後の最後にやっと通じてよかったのですけど。

【一條会長】 ちょうどノーベル賞の決定直後でしたっけ。ノーベル賞の噂は以前からかなり出ていたのでしたっけ。

【門松会頭】 決まった直後ですね。いや、ノーベル賞の噂はないですね。彼女は今クリックケミストリーで取れるとしたら取れる可能性はあったわけですけど、発明者ではないわけなので。ただ、生体の中で毒性もなくクリックリアクションができるということを開発した人という意味では足跡は大きかったと思うし。第一戦場というか、主戦場が糖鎖だったので、我々はなじみやすかったのですけど。でも、いずれにしても山本先生の話も森先生の話もベルトッツィさんの話も会場にとにかくたくさんの人に来ていただいた。ベルトッツィさんは第二会場も結構入ったのではないかな。あれはありがたかった、よかったですね。それぞれ個性もあってよかったですね。
 あと、プログラムそのものは特に仕組んでいませんでしたので、学術的な特徴と言われたら、一般的なことしか言えません。トレンドに沿ってだいたいいい感じで進んだのかなということと、僕は具体的に自分自身がすごく力を入れたわけではないですけど、やっぱり学会の在り方として高校生のような次世代を担う人たちへのインプットというのはすごく大事な気がしています。物理学会なんかはそもそも研究人口が少ないので毎年やっているのですよね。たぶん学生も100人じゃなかったと思う、相当の規模で招いているみたいで。

【一條会長】 それは今回の何かの企画の話でしたっけ。

【門松会頭】 高校生の発表会を実際にやったのですけど。今回急ごしらえで1年も時間がない、そう思っていたのですが、実際は東海地区だけでなくて遠方からも集まってくれました。発表そのものもちょっと指導教員の発表でしょみたいなものもありましたけど。でも、やっぱり来ている学生はすごく真摯だし、頭いいなと思う発表がすごく多かったですね。

【一條会長】 あれは学校がスーパーサイエンスハイスクールとかが多かったですね。

【門松会頭】 学校の先生が付き添いで来られるので、結構教育熱心なところはちゃんと来てくれるみたいなところがあるのですけど。今後生化学会として、こういう若い世代への発信をどうしていくかというのは考えていってもいいのかなとは思うのですね。分子生物学と生化学会が合体していくと、また考え方が違ってくるのかもしれませんけど。生化学会そのものが今少しまた持ち直してきていると思うのですけど、ただ、なかなか人口が増えるということにならないと思うので、やっぱり理科離れも考えるともう少し積極的に物理学の学会のような感じのアプローチはあるべきなのではないのかな。生命科学を代表する学会なので。

【一條会長】 そうですね、そういう意味で分子生物学会もやっぱり高校生発表をやっていますし、結構積極的に出張講義、出張授業か何かも組んでいるのですよね。

【門松会頭】 そういうことをやっているわけですね。逆に分子生物がやっていればいいのかもしれませんけども。

【一條会長】 いやいや、それはそれでいいと思うのですけど。そうはいっても、発表の枠はそう多くはないので。今回はどのぐらい、何人ぐらいに発表してもらえたのでしたっけ。

【渡辺】 ポスター発表が16,口頭発表が9、参加者は86人でした。

【一條会長】 遠方からというと、高校生は旅費とかのことも考えないといけないですね。全国からということになると。

【一條会長】 名古屋大会で困ったことは何かありましたか。

【門松会頭】 一番困ったことは企業ですね。企業については本当に、事務局とか運営会社にも苦労していただいたのですけど。やっぱり運営会社だけの力では動かないのですね。ですから、幹事会の先生たちに最後の最後に動いてもらって、知り合いに声を掛けていただいたりして、何とか帳尻を合わせるぐらいまでは集めることができたのですが、もう少し応援団がいてくれるといいなと思う一方で、例えばランチョンセミナーみたいなものを僕は今回は最初からあまり考えていなくて、それは別にお弁当とかがちゃんと用意できれば、みんながお金を出して買えばいいじゃんというふうに逆に思ってしまうので。ランチョンセミナーをたくさん設けるつもりは全然なかったのですけど。でも、企業展示とかああいうところでお金が稼げないと大会そのものが運営できないので、そこは最後まですごく気にしていましたが、運営会社は割とそういう意味では、「何とかなると思いますよ」という感じで。

【一條会長】 コロナの影響が大きいですよね。

【門松会頭】 大きいですね。

【一條会長】 対面で開けないと、企業展示も何もないわけなので。結構最後までというか、企業側の決断する時期がなかなか、対面でやることを決めた時期からでは企業展示が間に合わないとか、そういうことも結構あったのではないかな。

【門松会頭】 おっしゃるとおりです。

【一條会長】 そういう意味でいくと来年あたりは企業側も当然対面でやるだろうと思ってどんどん復活してほしいところですけどね。あとは、名古屋ということで、あの会場はすごく良い会場なんです。ちょっと駅からは離れてますけどね。

【門松会頭】 そうですね。駅から離れているのと、周りに気の利いたレストランとか食堂が少ないので、そこは少しありますよね。

【一條会長】 でも、人数的には今回は多く集まったのではないですか。

【渡辺】 参加人数は約3,000人です。コロナ前の横浜は3,200人でしたのでやや下回りましたが、演題数は100題近く増えました。

【一條会長】 横浜はいつも人が多く入る場所なので、それに比べるとすごく増えたんですね。今年の開催地の福岡は場所は本当にいいですよね。会場そのものは何会場かに分かれるのでしたっけ。

【住本第96回大会会頭(以下、住本会頭)】 基本的には国際会議場というのがありまして、そこがメイン会場になって、そこからすぐ隣にマリンメッセがあって、そこでポスターをやるという感じです。歩いて3、4分ぐらい離れています。ちょうど今年、「世界水泳選手権2023福岡大会」があるのですけど、このマリンメッセを使うのですよ。B館は新設されたばかりですので、新しくていいんじゃないかと思います。

【一條会長】 水泳場があるところなんですか。プールがある?

【住本会頭】 そこにプールを造る、そのためにマリンメッセB館のすぐ外に設営するのだそうです。
 国際大会でも今どきそういうことをするみたいですね。短期間でバタバタと造るのではないでしょうか。そして、終わったら、すぐ元に戻してしまうということみたいなので。ちょっとしばらくは様子を見に行けないなという話がこの間あったのですけど。

【一條会長】 開催は何月でしたっけ。

【住本会頭】 10月31日、11月1日、2日です。

【一條会長】 その頃はもうプールはなくなっているのですね。

【住本会頭】 もうなくなっています。この日程も、渡辺さんの素晴らしいアイデアで、実は生化学会が終わったあと3日間、11月3日、4日、5日と三連休になります。だから、いろいろな意味で九州をエンジョイしていただければなという日程になっております。

【一條会長】 素晴らしい。ありがとうございます。福岡はいろいろな意味で便利なので、楽しみにしています。大会のコンセプトとかポスターとか特徴とかについていかがですか。

【住本会頭】 私もない知恵を絞りまして、やっぱりここは一つある意味生化学会としての原点に戻って、そしてその上でなおかつ異分野融合を図ることが大事かなと考えました。ですので、もわっとしたものですけど、大会のコンセプトは「生き物は不思議だ!生化学は楽しい!」と致しました。
 生化学はそれこそ40年か50年前はかなり限られた人たちの学問という面が強かったと思うのですが、今どきは生命科学のある意味では基本の基本のところになっていますよね。ですので、そういう意味では、広がってはいるのですけども、もう一方で生化学としてどうやって深めるかということが一つの大事な問題かな。また今回の学会で、生化学プロパーの人たちもいろいろな分野にチャレンジする切っ掛けになってもらったらいいな。そういうことを考えております。ポスターにはそういう気持ちを表したつもりです。それと、半分ちょっとくらい私の趣味も入っています。
 「生き物は不思議だ!」というときに一番不思議な生き物は人間かなということがありますので、左上にまず「人間」。これは男性を出しても女性を出してもよかったのだと思いますが、これはご存知の方も多いと思うのですが、フェルメールという人が描いた「真珠の耳飾りの少女」という絵です。数年前、日本に来てご覧になった方も多いと思いますね。

 

【一條会長】 これは元はどこにあるのでしたっけ。

【住本会頭】 これはオランダにあります。フェルメールも17世紀のオランダの人で、フェルメールが描いた絵は世界中に散らばっているのですけども、この絵はオランダにあります。その流れで、右下の絵もフェルメールが描いた「地理学者」という学者をモデルにした絵なんですね。この絵はドイツのフランクフルトにあります。この絵とペアになる絵「天文学者」というのが実はルーブルにあって、この2枚ともモデルはレーウェンフックだといわれています。レーウェンフックといいますと、我々にぐっと近くなるのですけども、顕微鏡を使って初めて単細胞生物を観察したオランダ人です。レーウェンフックとフェルメールは同じ年にオランダのデルフトで生まれて、お互いに交流があったみたいですね。ですから、レーウェンフックは顕微鏡を最初に作った人の1人といわれていますけども、自作の顕微鏡を使って観察した絵をイギリスの王立協会に手紙で送っています。彼の名声を残すために役立ったのは、王立協会にいろいろな観察をするたびに手紙を出していて、その手紙の中の挿絵が実はフェルメールが描いたのではないかという説もあるぐらいに近い。フェルメールが死んだあとはレーウェンフックが死後の財産の管理人をやっていたというぐらい、近い関係なんです。このモデルが着ているのはジャパニーズ丹前なんです。この頃から日本とオランダの間はかなりの交流があり、日本でもいろいろな西洋のものが入ってきたのはオランダからという感じがありますよね、江戸時代に。日本の丹前というのが暖かくて、輸入品としてオランダで流行っていたらしいのです。このモデルが着ているのも丹前だといわれているのですね。左端に何かへんてこりんなものがあると思うのですが、これが実は顕微鏡なんです。レーウェンフックの自作の顕微鏡です。今の顕微鏡とちょっと感じが違いますけど。
 丹前を着た学者から顕微鏡に至るまでの間に、微生物として、O-157の電顕写真(感染症研究所の伊豫田 淳 先生にご提供頂いたものです)と酵母の電顕写真(九州大学の岡田 悟 先生にご提供頂いたものです)を載せています。そして、人間に至るまでの生き物をずらっと並べました。今度は日本の絵をも入れようと思って、まず植物として、真ん中の下に隠れて金色が光っている画は「燕子花図屏風」といって尾形光琳がカキツバタを描いたものです。その横は京都の高山寺が所有しているいわゆる「鳥獣戯画」。サルとかウサギとかカエルというのも生物学者にも比較的なじみの深いところです。その左上にサカナがいっぱいいるのは伊藤若冲の「動植綵絵」の1つです。この中にサカナとしてのモデルでもあるフグもちゃんと入っています。

【一條会長】 これはトラフグですね。

【住本会頭】 これはトラフグです。そして左上にあるのは、もともとはドイツ人ですけどオランダで画家であり、最初の昆虫学者といわれる、女性ですけど、マリア・ジビーラ・メーリアンという学者が自身で描いたスケッチです。この人が昆虫の変態、要するに幼虫から蛹になって成虫になるという過程を初めてきちんと記載したということで、「昆虫学の母」ともいわれている人です。これでは、ネズミがいないじゃないかというので、若冲の画の下にいたずらでバンクシーが描いたネズミを入れました。

【一條会長】 全然気がつかなかった。

【住本会頭】 次に、いろいろな生物の共通項という意味で、真ん中のバックに二重らせんのデザインを入れました。また、何か象徴的な意味をもつタンパク質の立体構造も入れようと思いました。そこで選んだのが、アドレナリンレセプターと3量体Gタンパク質のコンプレックスの構造です。真ん中の上の方でヘリックスがずらっと並んでいるのは7回膜貫通部分で、その下に3量体Gタンパク質の3つのサブユニットα、β、γがあります。これはノーベル賞受賞者のKobilka先生のグループが決めた構造を、ちょっとモディファイして使わせてもらっています。さらに、生物に共通する分子の代表としてATPとかNADPもバックに入れました。

【一條会長】 面白いですね。思い入れが満載ですね。

【住本会頭】 これは結構凝って作りました。そのコンセプトは先ほども言いましたように、生き物の不思議さと、それを扱うときに分子のレベルでやる研究の楽しさみたいなものが伝わればいいかなというのが希望です。せっかく日本の端っこの九州に来てもらうので、いろいろな意味でリラックスしてもらった上で学問を楽しんでいただけたらなと思います。

【一條会長】 ありがとうございます。素晴らしい。お聞きするとよくわかったのですけど、ポスターに説明は書かれているのですか。

【住本会頭】 いや、書いてないのです。

【一條会長】 じゃあ、このインタビュー記事が全会員に送られたら。

【住本会頭】 謎解きでみんなで思って、どういうことかなと。

【一條会長】 いや、わからない。今のは絶対聞かないとわからない。

【住本会頭】 それでしたら学会に来たらその解説文とかを載せておくとか。その一部をこの対談でリークしてもらってもいいかもしれません。

【門松会頭】 僕も一條先生と同じで、住本先生のこのポスターだけで合格という感じがします。ぜひ解説を、このインタビューも含めてですが、例えば表紙絵の裏ぐらいに丁寧に書いていただくと感動すると思うのだけど。

【住本会頭】 わかりました。ちょっと考えます。

【一條会長】 ポスターとともにコンセプトがよくわかった気がするのですけど、今度はそれを実現するためのプランみたいなところは今どんな感じで進めていただいているのかを。

【住本会頭】 今までのやり方と少し変わってしまってご批判を受けるかもしれないのですけども、特別講演の在り方をちょっと変えさせてもらおうと思って、思い切ってできるだけ若い方に、ということを考えました。とりあえず私(65歳)より若い人に話してもらうことにしました。それに加えて、せっかく九州でやりますので、旅費もあまりかかりませんし(笑)、九州の方にもお願いすることにしようと考えました。外国から招待することも考えたのですけれども、昨年は来日できるかどうかがギリギリまではっきりせず苦労されたという門松先生のお話を聞いていて、もうコロナは大丈夫だとは思いますけども、先のことは読めないので、そういうことでバタバタしたくないなと思いました。
 「生き物は不思議だ!生化学は楽しい!」という感じとともに「生命科学の未来に向けて」話していただくべく全国から3名の方にお願いして、その上で、さらに3名の九州地区の方にもお願い致しました。特別講演は参加者全員で聞く講演という意味もあり、一緒の学会に出たという意識を共有する上でも大事かなと思って選ばせていただきました。
 まず、生化学とも関係が深く、それから分子生物学とも関係が深いという意味で、大きくいったら分子細胞生物学となるのでしょうか、その分野で独創性の高い研究を展開され、さらに分子生物学会の理事長もされている後藤由季子先生(東京大学)に、極めて多忙だと知っていながら図々しくお願いしましたら、承諾をいただきましたので、後藤先生に話していただきます。それから、生化学といいますと、やっぱり代謝が歴史的にも重要な分野ですが、代謝研究の中で今新しい流れになりつつあるのが硫黄の代謝でして、その硫黄代謝の研究で世界をリードしている赤池孝章先生(東北大学)に話してみてくれないかとお話ししましてご快諾を得ました。もう1つ、これは私も自分がわからないなりに興味といいますか憧れがあるのですけども、理論的なことを生物学にどう持ち込むかというのはすごく大きな問題だと思うのです。私なりに勉強させてもらって面白いなという形を展開していらっしゃる方が望月敦史先生(京都大学)で、まだ50歳ぐらいなんですけども。理論生物学についての意識をみんなで共通して持つのはいいのではないか。例えばシグナルのネットワークとかももうネットワークだらけになって、どこが大事かをどうやって考えるのかがすごく大事な問題だと思うのですが、そういうことを非常にユニークなやり方でトライしている先生なので、こういう方の話をみんなと共有するといいかなというふうに思ってお願いしましたら、望月先生にもOKをいただきました。皆さんには、「生命科学の未来に向けて」という視点で、ご自身の研究・興味と重ね合わせて(例えば、こういうワクワクするテーマがまだまだ手付かずに残っている、というような話も含めて)話して頂くようお願いしています。
 九州地区からは以下の3名の先生に特別講演をお願いしました。九州地区と言いながら、結局人選が九州大学に偏ってしまったのは全て私の責任です。ご批判は多々あろうかと思います。ただ、聞いてよかった、という話をしていただけるものと確信しています。生化学にとっても切っても切れない構造生物学については、NMRもX線もクライオ電顕も含めて広い経験と見識をお持ちの神田大輔先生(九州大学)にお話しいただきます。今回の特別講演者の中では年齢が一番上で、私より一つ下なんですけど、ちょっと広い歴史的なことも含めて話してもらえたらなと思って、神田先生にお願いしました。
 また、ゲノム科学はこの30年間生化学にもすごく大きなインパクトを与え続けてきたわけでが、ゲノム科学の中核で仕事をされてこられた伊藤隆司先生(九州大学)にはゲノム科学の未来を含めた話をしてくださいというお願いをしています。それから、先ほど言いました理論生物学、望月先生の話とちょっと違う形から理論的なことをやっている三浦岳先生(九州大学)。この方はお医者さんですが、いわゆる形態形成の数学をバリバリやっている人です。
 そういう方と、最初にお話した3人と組み合わせて1日に、ちょっと時間がタイトになるのですが、2つずつ特別講演をやってもらって、みんなで統一した問題意識とか、今後の方向性とか、そういうことも考えてもらいたいと思って、そういう企画をしました。特に九州地区の先生方には、それぞれに関連したシンポジウムも組んでもらっていますので、特別講演を聞いて興味を持った方はシンポジウムにも行ってもらうという流れにしております。

【一條会長】 特別講演のときは、他にパラレルに走るものはやらないですよね。

【住本会頭】 やらないです。ちょっと日程が詰まるのですが、3日目の夕方もまたシンポジウムをするようにして、何とか時間をやりくりしようと考えています。3日目の次の日(11月3日)は休みですし。それから、シンポジウムはかなりいろいろな方にお願いいたしまして、若手中心のシンポジウムも色々とあります。一方で、生化学会前会長の菊池章先生(大阪大学)ともいろいろ相談しまして、「先輩方から、私はこうやってきたんだという話をじっくり聞くようなシンポジウム」もあったほうがいいじゃないかということで、菊池先生オーガナイズの、まさにあっと驚く豪華シンポジストによる豪華シンポジウムも開いていただきます。また、同様の先輩方によるシンポジウムは、2012年の福岡での生化学会大会の会頭をされた藤木幸夫先生(九州大学名誉教授)にも企画して頂きました。こちらも負けず劣らず、あっと驚く豪華なシンポジストです。

【一條会長】 もう7、8年前だと思いますが、分子生物学会でしたけど、「シグナル伝達温故知新」といって、そういうシンポジウムを組んで、黎明期の頃から歴史も含めて話してくれと言って大御所の先生を5、6人集めてやったことがあります。めちゃくちゃ好評でした。そういうのは若い人にとっても歴史的な背景を知るというのは結構いいかなと思います。楽しみですね。

【住本会頭】 菊池先生オーガナイズのシンポジウムでは、菊池先生に加えて、長田重一先生(大阪大学)、西村いくこ先生(奈良国立大学)、中野明彦先生(理化学研究所)が、一方、藤木先生オーガナイズのシンポジウムでは、藤木先生に加えて、大隅良典先生(東京工業大学)、永田和宏先生(JT生命誌館)、吉田賢右先生(京都産業大学)、伊藤維昭先生(JT生命誌館)がシンポジストとして話して下さいます。このような素晴らしい先輩方からの話が、若い人たちにとって、今後の何らかの切っ掛けになってもらえればいいなと思っています。
 また、他にも多くの意欲的なシンポジウムを企画して頂きました。とても全体は紹介しきれませんので、1つだけ。「生き物は不思議だ!」という観点からもサカナも興味深い生き物です。そこで杉本幸彦先生(熊本大学)には『魚が先導する生化学研究の新しい潮流』というシンポジウムをオーガナイズして頂きました(共同オーガナイザーは大阪大学の石谷太先生)。
 参加者にとって、ご自身の仕事の新しい展開のきっかけになりますことを切に望んでいます。

【一條会長】 ポスターもそうですけど、思い入れがすごいですね。門松さん、いかがでしたか。

【門松会頭】 住本先生のレクに圧倒されておりました。特に最後の2つの話はすごく興味深くて、若い人がどこまで反応するかわからないけど、我々の年代だとかなり反応するのではないかと思って。若い人を連れていけば、これは本当にためになるシンポジウムになると思ったし、住本君らしく、よくよく考えたプランになっていて、とても僕なんか足元にも及ばないと思ったし。本当にいい感じでいけるのではないかと思いました。

【一條会長】 そういうシンポジウムのオーディエンスの年齢層を調べてみたいですね。

【住本会頭】 大先生方、皆さん心配していて、ガラガラだったらどうしようかと言われているので、狭い部屋にしてくれと逆に言われているのですけど。いや、結構入るのではないかなと私は思っています。

【一條会長】 ポスター会場とかの特徴はありますか。

【住本会頭】 今ちょっと考えているのは、できればポスター会場にただでサンドイッチとかおにぎりを配れればいいなと、個人的には思っているのです。そういうものを食べながらディスカッションしてもらってもいいのかなというふうに思っています。

【一條会長】 好き嫌いはありますけど、ビールなんかがあるともっといいですね。

【住本会頭】 個人的には絶対そうです。それとキッチンカーを呼んで会場の近くか中ぐらいのところに誘導したらどうかなと考えています。

【一條会長】 キッチンカーがあるとありがたいですね。博多の屋台みたいなものがずらっと並んでいると。

【住本会頭】 どこもそうでしょうけど、キッチンカーは福岡でも今ものすごく増えていまして、結構おいしいものを出すところも多いみたいですので、それができればなと思っています。あと、結構懇親会の参加者が多いかもしれませんので、そこは会長、ぜひよろしくお願いします。

【一條会長】 思い入れたっぷりだということは非常によくわかりました。本当にありがとうございます。楽しみです。今日はどうもありがとうございました。

【住本会頭】 こちらこそ、ありがとうございました。

[了]